• The BAZAAR EXPRESS vol1(1998,12,12)
     アイドルを泣かせた男、それは私

    それは、思いがけない光景でした。 何の言葉がきっかけだったのか、小宇宙を思わせる彼女 の二つの大きな瞳にピンク色のオーロラが掛かったかと思う間もなく、両頬にツーっと二筋の水滴が流れたのです。 「うれしいです、わたし。ここまで色々な方にお世話になって、 自分でも頑張ってきたと思います」 そう言いながら、彼女、奥菜恵は頬に光るものを拭おうとも せずに、真っ直ぐに僕を見つめてくれました。 「えっ、オキナメグミ? ごめん、それって誰?」 思えば今回の取材は、そんな言葉がスタートでした。
  • The BAZAAR EXPRESS vol2(1999,01,08) 
    異文化の風に吹かれて

    初めて異文化を体験したのは、14歳の夏でした。 アメリカ中西部に広がる大草原地帯。映画「ダンス・ウィズ・ウ ルブス」の舞台にもなったネブラスカ州。角が取れた正月の餅のような その州の中央左にあるブリュースターという街で、中学2年の僕は一ヶ月の ホームステイを体験しました。 人口500名。牛の数数万頭。見渡す限りのサンドヒルのあちこちで風車がのんびりと羽根を廻しています。その風力で地下水を引き上げ、そこが牛の水場なのです。僕と同年代のホストはすっかり家の働き手の一員となり、夏の間中トラクターを運転し朝夕は牛に餌を与えアルファロファという草を刈り、汗にまみれていました。僕もまた朝一番で牛舎に出かける彼に遅れてなるものかと、目覚しのない中でも必死にベッドから飛び起きる日々。それはとても新鮮な生活でした。 もちろん当時のこと(今も余り変りませんが)、ボキャブラリーの貧弱さは如何ともし難いものがありました。
  • The BAZAAR EXPRESS vol3(1999,02,13)
     あなたと二人静かに燃えて

    「あなたと二人静かに燃えて、手を組んでいる喜びを 下を見ているあの白い雲に隠すのはよしませう ふたり一所に歩いた十年の季節の展望は ただあなたの中に女人の無限をみせるばかり」 取材に向かう道すがら、JR車内の広告にこんな詩をみつけました。
  • The BAZAAR EXPRESS vol4(1999,04,04) 
    春宵一刻、値千金……

    春、 南の街に住む学生時代の友から久しぶりの便りが届く。 封筒の中には、「国語は人間学」と表紙に書かれたザラ紙の冊子が一冊。 「生きることの意味~私は小学校1年の頃から、学校からの帰り道、自分が動いているのか、それとも地面が動いているのかと歩きながら考えるような、へんな子供であった。2、3日家を離れるときは、今までお世話になりましたと家の方に向かって頭を下げた」 こんな書き出しに始まって、何枚かのレジュメが綴じられている。教え子の高校生に配ったのだろう。一応ページの冒頭には「山月記」「城の崎にて」「筒井つの」といった文学作品の名前が並んでいる。 けれど彼が書きたかったのは、それらに添えられた言葉たちだ。 「被害者としての生き方」「人間存在の不安」「我々はとらえの世界に生きている」--- 変わらないな、と思う。
  • 週刊読書人「ニュー・エイジ登場」

    その1「地球の裏側にいる異なる世代の同胞」

    3月初旬、木々の先端の蕾が微かに色づき始めた南国・高知を訪ねてきた。 昨年末から、偶然手に入れた電話番号に何度も電話をかけつづけ、やっと相手と繋がったのは2月のことだった。 「のんふぃくしょんらいたぁのこうやまさんですか?」 名前を告げると受話器の向こうの声が一層大きくなった。一語一語クッキリとした発音も前のままだ。 「私は去年日本に戻りました。今は娘のところにおりますが、娘は大阪に働きに行っていて、私は老人ホームに預けられています。シイシイ、今日はたまたま家に戻ってきましたが。春になったらまたハバナに戻ろうかと思っています」 流暢な日本語の中に時折スペイン語が混じる話し方も懐かしい。真鍋直さん。93歳。
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